S博士

物語り・その19

物語り その19

「進化」とは環境が有機体の構成要素を選択するフィルターの役割を果たす作用であり、その有機体では複雑に作用し合う「物理法則」が繁殖の成功を可能にするように最適化される。「細胞」と「進化」は深い結びつきを持っているが、そこには「イオン相互作用」という分子間に働く物理的原理と、「エネルギーを最小限」に抑える傾向があり、それが長い分子の連鎖を「細胞の袋」へと導くのである。他の惑星でも生命は分子を包み込んだ脂質から始まり、巨大な生物へと進化するという同じ旅に出ると推測される。生命の形態がどの段階まで進んでも、その過程全体を制御するのは、細胞内で作用する物理的原理である。
物語り・その18

物語り その18

600~500万年前に始まった「ヒト科」の生物は九種が確認されているが、初期で最も重要なのは、道具を使用する能力からその名がつけられた「ホモ・ハビリス」である。ホモ属としては最古の種で約250万年前に出現したが、約150万年前にはそれから「ホモ・エレクトス」が生まれ、最終的に我々「ホモ・サピエンス」が派生し、さらにいくつもの変種へと細分化した。我々の種「現生人類」の中で最古の仲間は、19万5000年前に現在のエチオピアにあたる地域で生活していた。しかし間もなく、この集団はアフリカ大陸の遥か南へと旅立ち、それから北へと進み、アフリカからユーラシア大陸に渡り、次第に世界中に広がった。
物語り・その17

物語り その17

鳥類の始まりは約1億5000万年前に出現した「始祖鳥」である。鳥類の起源については主に二つの見解、すなわち、恐竜以外の双弓類から進化したという考え方と直接恐竜から進化したとする見解があったものの、現在では「恐竜起源説」が確定的となっている。「現生鳥類」は歯をもたないが、白亜紀の祖先である歯をもつ鳥類から進化したものである。なお、歯を持つ種は白亜紀末まで生息していたが、大型小惑星の衝突により最終的に絶滅した。また、新生代中期に鳥類が再び肉食恐竜に進化しようとした事実もあるが、この中で最も有名なのが「恐鳥類」である。
物語り・その16

物語り その16

哺乳類については、その多様化、最も目立つ変化である大型化は恐竜が絶滅した直後に起きた。その後の27万年間で、哺乳類は多様化するとともに体も大きくなっていったのである。ただし、本当の意味で大型と呼べる哺乳動物が出現したのは、約5500万年前になってからであった。当時、地球の温度が急速に上昇し、世界中に森林が広がり、南北両方の極地付近にも樹木が生い茂った。これは、哺乳類の多様性の大幅な拡大を後押しした可能性がある。
物語り・その15

物語り その15

中生代の海洋は温暖化の影響で時間とともに変化していったが、当時を象徴する「アンモナイト類」と「イノセラムス類」は、状況が許せば今でも生存していた可能性がある。しかし、約6500万年前、チクシュルーブ小惑星が地球に衝突し、恐竜をはじめ当時存在した種の半分以上が急激に絶滅した。なお、この絶滅は小惑星の衝突という単発のイベントだけが誘因ではなく、衝突の前にデカン高原での噴火で大気中に多量のメタン、二酸化炭素、二酸化硫黄などの温室効果ガスが放出されたため地球の気候と環境が激変し、大量絶滅が誘発された。デカントラップが世界を弱らせ、隕石がとどめを刺したのである。
物語り・その14

物語り その14

恐竜が三畳紀の低酸素状況から脱出できたのは、二足歩行の姿勢をとることで「キャリアの制約」を克服するとともに、「精巧で効率の良い肺」を進化させたからである。「直立した姿勢」と「進化しつつある気嚢システム」を通じて、同時代の他の動物よりも「呼吸効率」が高かったと考えられている。鳥類は恐竜の一グループであり、ジュラ紀に登場した。そして最終的には、「現存の爬虫類とはまったく異なる肺システム」と「内温性」の両方を獲得したことがわかっている。また、ジュラ紀後期から白亜紀にかけての高酸素で高温の環境に対応して、恐竜は硬い卵を進化させ、複雑な構造の巣の中に卵を埋めるようになった。
物語り・その13

物語り その13

第四部 生命の進化第8章 大絶滅と三畳紀爆発【2億5200万 ~ 2億年前】1.大絶滅 ― 酸素欠乏と硫化水素【2億5200万 ~ 2億5000万年前】南アフリカ中部に位置するカルー砂漠には、約2億7000万年前から約1億7500万年前にか...
物語り・その12

物語り その12

石炭紀からペルム紀の初めの「高酸素」の時代、その影響は特に昆虫に明確に現れており、翼幅が76センチにもなるとんぼ「メガネウラ」も発見されている。脊索動物の最も緊急の課題は水中以外で卵の胚をどのように成長させるかであり、「羊膜卵」が誕生した。羊膜卵を有する爬虫類が祖先である両生類から区別されるようになり、石炭紀前期が終わる頃には爬虫類が三つの大きな祖先系統、すなわち「哺乳類」、「カメ類」と、後に「鳥類」を生んだ別の「爬虫類」になった。なお、これらは大気中の酸素濃度の影響を受けており、酸素濃度が高いほど胚の成長は速まるし、「胎生」も高酸素環境によって可能になったとする見解もある。
物語り・その11

物語り その11

淡水域に生息していた可能性が高いある種の「緑藻類」の陸地への進出を皮切りに、シルル紀後期からデボン紀初期(約4億年前)にかけての陸上植物の出現は、陸地への最初の進出を促進した。「節足動物」の複数の系統が独自に空気呼吸システムを発達させ上陸した後、両生類(陸で暮らせる魚)の構造は一度で発達したのではなく、二度ないし三度にわたって進化した可能性がある。
物語り・その10

物語り その10

「オルドビス紀」に最も顕著に進化したのは「群体性」の動物であり、しかもそれらが特異であった点は、絶え間ない「多様化」を推進する原動力となったことである。特に注目すべき存在は「サンゴ」、「外肛動物」、そして新種の「海綿動物」であった。地球上の動物の多様化が二部構成で進行したとすれば、第一部はカンブリア爆発であり、オルドビス紀はその第二部に当たるが、どちらのケースも酸素濃度の上昇が原動力であった。